看護師が求める「働きがい」とは?職場の影響と働きがいを高める方法を解説

「やりがい」と書かれたイラスト

「看護師のやりがいとは?」

新人の頃から毎日のように自問自答している看護師さんも多いのではないでしょうか。

この「やりがい」や「働きがい」の感じ方は、看護師さん個人によって当然いろいろあります。

しかし、職場環境によって大きく左右される感情であることも事実です。

「あなたの職場には、働きがいがありますか?」

あなたが今の職場に働きがいを感じることができるかどうかで、今後の看護師人生をも左右することになるかも知れません。

今、自身の職場環境を評価することは、あなたのキャリアにとってとても重要な機会になると考えます。

本記事では、看護師さんにとって働きがいがある職場とはどのような職場なのか、また働きがいを高めるためのポイントについても解説します。

この記事を読んで、今後のキャリアプランや転職活動の参考にしていただけるとうれしいです。

目次

「働きやすい職場」と「働きがいがある職場」の違い

「うちの職場、普通に働きやすいんだけど、働きがいが足りないような…」

「最近、看護師としてのやりがいが感じられなくなったな…」

「働きやすい職場」と「働きがいがある職場」、あなたにはこの違いがわかりますか?

それぞれ特徴をみていきたいと思います。

「働きやすい職場」とは

「働きやすい職場」としてよく聞くのは、

  • 職場の雰囲気が良くて、
  • 福利厚生が整っていて、
  • ワークライフバランスが取りやすくて、
  • しかも給与がいい!

という意見です。

しかし、これらの全ての条件が当てはまる職場も、そうそうないことは皆さんも感じているのではないでしょうか。

以下の記事では、働きやすい職場の特徴と探し方について解説しています。是非ご参考ください。

「働きがいがある職場」とは

価値や喜びが得られているか

「働きやすい職場」に対して、「働きがいがある職場」とはどのような職場を言うのでしょうか。

そもそも働きがいとは、働くことによって得られる価値や喜びを指します。

目に見えやすい職場環境や労働条件と異なり、自分の意思で前向きに仕事に取り組んでいる状態を表すものです。

これには当然個人差が出てきます。

目が回るくらい忙しい職場に対しても、心身ともに疲れ果てて看護師としてのやりがいを見失う人もいれば、逆にたくさん働けていることにモチベーションを感じながら働いている人もいるかも知れません。

信頼関係に基づく自己効力感が持てるか

スタッフが働きがいを感じる職場というのは、医療機関とスタッフの間に確かな信頼関係ができていて、スタッフが主体的に仕事に取り組むことができている職場に多いと考えます。

職場との信頼関係ができているスタッフは、多少忙しくてもモチベーションを保つことはできるでしょう。

あなたが職場の中でいかに期待されて、「自分は役立っているんだ」という自己効力感が持てるかどうかが重要になります。

看護師はどんなことに満足を感じているのか

「やりがい」は満足を感じる点の上位4番目

ここでは、株式会社エス・エム・エスが実施した「看護師の働き方に関する意識調査」(2021年11月~12月・「ナース人材バンク」、「ナース専科」を利用している看護職18,130名対象)を参考に、看護師の仕事に対する意識を覗いてみたいと思います。

順位満足を感じる点「満足」の割合
1位患者との関係81.6%
1位同僚との関係81.6%
3位休日・休暇の希望考慮74.5%
4位やりがい66.7%
5位配属先の希望考慮65.6%
現職で最も満足を感じている点
株式会社エス・エム・エス「看護師の働き方に関する意識調査」より引用

満足を感じている項目の上位5位までを紹介しました。この中で4番目に「やりがい」という項目が挙げられています。

どの職業にも、それぞれのやりがいがあると思いますが、看護師という職業でしか味わえないやりがいがあるはずです。

コロナ禍のコメントから確かな「やりがい」が伝わる

さらに、本調査におけるやりがいに関するコメントをいくつか紹介したいと思います。

コロナ禍で病気を持っていたり病気にかかることは特に不安が多くなると思う。そこに寄り添えるのは看護師の仕事だけだと思うため。(20代女性/東京都)

看護師の必要性を改めて理解し今後も頑張ろうと思えた。(20代女性/神奈川県)

第一線で自分のできることをしたいと強く思った。(40代女性/大阪府)

コロナ禍で実施されたアンケートということからも、コロナに対峙する看護師の職業倫理の高さと強い信念を感じます。

未曽有の状況の中、看護師の仕事にやりがいや誇りを感じていたことが伝わるコメントですね。

引用:プレスリリース|看護師の働き方に関する意識調査:看護マンガ・ライフ&キャリア記事|読み物|ナース専科

看護師と他の職種で異なるやりがいの感じ方

公益財団法人日本医療機能評価機構が発行した、2022年度「患者満足度・職員やりがい度 活用支援プログラム【年報】」から、職種別に「職員やりがい度」の状況がどうなっているのか確認していきたいと思います。

スクロールできます
公益財団法人日本医療機能評価機構・2022年度「患者満足度・職員やりがい度 活用支援プログラム【年報】」より筆者作成 

上の表をみると、看護師の総合評価は2.8で他の職種に比較して最も低い点数であることがわかります。

「仕事のやりがい」という項目だけ見ても、全体の平均を下回っていることがわかります。

特に看護師の総合評価を押し下げているのは、「処遇条件」、「精神的な不安」、「医療介護の質」の3項目です。

現職において看護師さんが働きがいを一層感じるためには、この3つの項目をケアすることが重要になりそうです。

公益財団法人日本医療機能評価機構ホームページ・2022年度「患者満足度・職員やりがい度 活用支援プログラム【年報】より引用
manzokudo_nenpo_2022.pdf

看護師としての働きがいを高める方法とは

人差し指を立てるポーズをする笑顔の女性看護師

先ほど紹介した調査結果から、今の職場で看護師さんの働きがいを押し下げている要因として、

  1. 「処遇条件」
  2. 「精神的な不安」
  3. 「医療介護の質」

の3つあることがわかりました。

ここでは、この3つの要因を改善させるために、皆さんが何を実践するべきかについて考えたいと思います。

1.「処遇条件」に対する働きがいの改善ポイント

看護師さんからよく聞く悩みとして、

  • 経験年数が増えても給与が見合わない
  • 仕事が大変な割に待遇が不十分

というものがあります。

提供している労働に見合う給料がもらえないということは、誰しも感じたことがあるのではないでしょうか。

ここでは、処遇条件の悩みに関する対処法を考えたいと思います。

① 専門性を高める

専門性を高める研修や資格取得にチャレンジすることで、経済的インセンティブを受ける機会を広げることができます。

以下のことを意識してみましょう。

  • 院内外の研修情報を積極的に収集する
  • 興味のある専門分野の勉強会や学会に参加する
  • 同じ職場の専門看護師や認定看護師などに資格取得のアドバイスをもらう

② リーダーシップスキルを磨く

後輩の指導や委員会活動に積極的に参加し、リーダーシップスキルを磨くことで昇進の機会を増やせます。

以下のことを意識してみましょう。

  • 後輩の指導や新人教育に積極的に関わる
  • 施設全体の委員会や看護部の委員会活動に積極的に参加する
  • 職場の上司など参考になる看護師からリーダーシップの言動を学び、取り入れる
  • リーダーシップに関する書籍を読み、理論を学ぶ

③ 転職を検討してみる

「現時点で、ある程度職場に貢献できているのにそれに見合う給料がもらえていない」

そう感じる場合、転職を検討するのもひとつの方策です。転職を意識して世間一般の処遇条件を調べてみることで、自分が看護の転職市場でどの程度の価値があるのか認識できるからです。

その際、以下の3点を意識して調べてみましょう。

  1. 基本給が業界平均以上であるか?(以下の記事をご参照ください)
  2. 夜勤手当や残業手当が適切に支給されているか?
  3. 昇給・賞与制度が明確であるか?

ただ、この➊~➌を調べる前提として、以下の3点の確認も必要です。

  1. あなたが今もらっている給与の現状を正しく把握する
  2. 気になる転職候補先の処遇条件を施設ホームページや転職サイトで確認する
  3. 1と2を比較してみる

まず、上記の3つの情報を正しく理解してから、➊~➌の調査を行うことが大事になります。

なお、転職を考え始めたときの心の準備について、以下の記事で詳しく説明しています。併せてご参考ください。

2.「精神的な不安」に対する働きがいの改善ポイント

看護師さんからよく聞く悩みとして、

  • 「人の命に関わる仕事に対するプレッシャー」
  • 「看護師自らが感染症にかかるリスクに対する不安」

というものがあります。

特にコロナ禍では、自ら感染症にかかる不安に怯えながらも、がんばって働き続けた末の看護師さんたちのバーンアウトが懸念されました。

ここでは、看護師として働くうえでの精神的な不安や、感染リスクに対する不安について、その対処法のポイントについて考えていきたいと思います。

①継続的な学習と技能向上

最新の医療知識や技術を常に学び続け、自信を持って業務に当たることで、仕事の不安を和らげることができるかも知れません。

感染リスクへの対処法としては、適切な感染予防策の徹底・正確な情報収集・健康管理の徹底が重要になります。

②チームでの支え合い

同僚や先輩看護師、上司と経験や不安を共有し、互いにサポートし合う関係を築くことで、仕事に対する不安を軽減することができます。

③患者とのコミュニケーション

患者さんとのコミュニケーションを意識的に増やし、個々のニーズに寄り添うことで、看護の本質的な喜びを再確認できます。

看護師としてあなた自身の仕事の意義を再確認することで自己効力感を高め、今の仕事に対するモチベーションを高めることができます。

④メンタルヘルスケア

自分なりのストレス解消法を見つけることで、精神的な負担を軽減できます。音楽を聴いたり、趣味を楽しむなどリラックスできる活動を意識的に日課に組み込むことが大事です。

職場にカウンセリングの機会が用意されている場合は、定期的なカウンセラーとの会話をとおして精神的な安定を保つことができるでしょう。

⑤感謝の気持ちを表現する

「ありがとう」をたくさん言う習慣をつけるのも不安への対処法になります。

日常生活から感謝の気持ちを持つことで、潜在意識にポジティブな影響を与え、自己成長や問題解決につながる可能性が高まります。

なお、以下の記事では、看護師に向いてないと感じたときの思考法について解説しています。是非ご参考ください。

3.「医療介護の質」に対する働きがいの改善ポイント

看護師さんからよく聞く悩みとして、

  • 「今の職場の教育体制に不安…」
  • 「患者さんを安全に介助できるか心配…」

というものがあります。

教育体制の充実度合いは、安全に看護を提供し、安心して働き続けることができるかどうかに大きく関わる要素と言えるでしょう。

しかしながら、施設の教育体制を直ちに改善させることは、看護師個人としてはなかなか難しいもの。

ここでは、医療介護の質に対する不安を看護師自らが軽減し、働きがいを探るための方策について考えていきたいと思います。

①キャリアプランを具体化する

看護師として長期的な目標を設定し、それに向けた具体的なステップを計画することで、将来のキャリアパスが明確になり、やりがいを見いだすことができます。

以下のことを意識してみましょう。

  • 自己分析を行い、自身の特性や強み、興味のある分野を明確にする
  • 長期的なキャリアの目標を設定し、具体的な行動計画を作成する
  • ロールモデルとなる先輩看護師や上司と定期的にキャリア形成に関する対話の機会を持つ

キャリアプランの考え方について、以下の記事でも解説していますのでご参考ください。

②専門領域を見つける

特定の疾患や看護技術に特化した専門性を身につけることで、新たな挑戦と成長の機会を得ることができます。これにより、看護師としてのやりがいを取り戻すことができるかも知れません。

以下のことを意識してみましょう。

  • 専門看護師、認定看護師の資格取得など新たな目標を設定する
  • ロールモデルとなる先輩看護師や上司から専門特化に関するアドバイスを受ける
  • 院内外の研修や勉強会に積極的に参加する

③転職を検討してみる

もし、キャリアプランの具体化や専門特化でやりがいが見いだせない場合、転職を検討しながら周辺施設の教育環境を再認識することができるかも知れません。

教育制度の観点から転職を考える場合、どのような職場がいいのでしょうか。以下の点を参考にしてみてもいいかも知れません。

★キャリア支援制度が充実している病院

専門・認定看護師の資格取得支援や、看護系大学院進学支援などを行っている病院では、自己効力感や成長実感を得る機会に恵まれているため、看護師としての働きがいを感じやすい環境だと言えます。

★幅広い看護経験が積める地域密着型多機能病院

急性期から回復期、在宅まで幅広い看護を学べる地域密着型多機能病院では、多様な経験を通じて成長を実感しやすい環境にあると言えます。

★定期的な振り返りの機会がある病院

新人懇話会のような定期的な振り返りの機会がある病院では、自己の成長を客観的に認識しやすくなります。

現時点における自身の成長を実感できる環境に身を置いて、働きがいを感じながら看護師としてさらなる成長が期待できるかも知れません。

なお、転職か異動か迷う場合の対処法について、以下の記事で解説しています。是非ご参考ください。

まとめ

本記事では、看護師さんにとってどのような職場に働きがいがあるのか、また、働きがいを高める方法について解説してきました。

看護師さんが職場に働きがいを感じるための条件として、

  • 「処遇条件」の改善
  • 「精神的な不安」の改善
  • 「医療介護の質」の改善

の3点を挙げてみました。

ただ、この3点以外にも皆さんが感じる働きがいは人それぞれあると思います。

これを機に、看護師として長く働いていくうえで、今の職場環境を改めて見直してみてはいかがでしょうか。

それと併せて、仕事に対する価値観や興味、あなた自身の強みなどについても見直すきっかけになれば幸いです。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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この記事を書いた人

吉澤社労士事務所代表。社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)。医療機関で25年間事務職に従事。総務、経理、医事、健診部門など幅広く経験を積み、2024年4月に独立。地元・東京都日野市にて医療機関専門社労士として活動中。
看護師さんの働き方や転職活動のこと、病院人事担当者の本音などを発信しています。今後ともよろしくお願いします。

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