Q. 職場環境は悪くないのに、看護師としてのやりがいが感じられません。何が問題なのでしょうか?
「給料も悪くない、人間関係もそれほど問題ない。でも何かが足りない」
こういった感覚を抱えている看護師は少なくありません。
元病院人事として多くの看護師の採用・定着に関わってきた立場からお伝えすると、
「働きやすい職場」と「働きがいがある職場」は別物、だということです。
環境が整っていても、働きがいがひとりでに生まれてくるわけではありません。
逆に、多少忙しくても働きがいを充分感じている看護師もたくさんいます。
この記事は、看護師の「働きがい」がどこから来るのかを整理するためのページです。
結論:

「働きやすさ」と「働きがい」は別物です。環境が整っていても、働きがいが生まれるとは限りません。
「働きやすさ」は職場の条件や環境が整っているかどうか、という外側の話です。
一方、「働きがい」は自分が仕事に価値や喜びを感じているかどうか、という内側の話です。
この2つを混同したまま「働きがいのある職場を探そう」と動いてしまうと、転職しても同じ疑問にぶつかりやすくなります。
「働きやすい職場」と「働きがいがある職場」の違い

「働きやすい職場」とは
- 職場の雰囲気
- 福利厚生
- ワークライフバランス
- 給与水準
など、目に見える条件や環境が整っている状態を指します。
これらは働き続けるための「土台」になるものです。
ただし、土台が整っていても、働きがいが自然に生まれるとは限りません。
「働きがいがある職場」とは
働きがいとは、働くことによって得られる価値や喜びのことです。
条件ではなく、自分が主体的に仕事に取り組んでいる状態を指します。
人事として多くの看護師を見てきた経験から言うと、職場との確かな信頼関係があり、「自分は役立っている」という自己効力感を持てている看護師は、多少忙しくても働きがいを感じています。
逆に、条件が整った職場でも、自分の役割や貢献が見えにくい状態では働きがいを感じにくくなります。
データで見る「看護師が満足を感じる点」
株式会社エス・エム・エスが看護職9,304名を対象に行った調査(2025年)によると、現職で最も満足を感じている点の上位は以下のとおりです。
| 順位 | 満足を感じる点 | 「満足」の割合 |
| 1位 | 同僚との関係 | 81.8% |
| 2位 | 患者・利用者との関係 | 76.5% |
| 3位 | 休日・休暇の希望考慮 | 73.5% |
| 4位 | やりがい | 66.5% |
| 5位 | 配属先の希望考慮 | 64.9% |
株式会社エス・エム・エス「約1万人に聞いた看護師の働き方に関する意識調査2025」より引用
引用:【約1万人に聞いた看護師の働き方に関する意識調査2025】6割超が職場に満足も人員配置に7割が不満。職場で受けたい研修は「ストレス管理」が最多。ハラスメント・メンタルヘルスケアに関する外部の相談窓口を希望~約8割がICT導入で情報共有しやすいと回答、急性期・回復期病院、訪問看護でのICT導入率は9割超~ | 株式会社エス・エム・エス
4位に「やりがい」という項目が挙げられていますが、注目すべきは1位と2位です。
「同僚との関係」と「患者との関係」という、人との繋がりを示す項目が満足の最上位に来ています。
つまり、職場における人との関係性の質がやりがいの土台になっていることが読み取れます。
筆者が運営するメインサイトの「医療機関支援系ブログ」にて、職種別でみた働きがいについても考察していますので、参考にして下さい。
参考:医療機関支援系ブログ「医療スタッフの働きがいを高めて、医療機関の価値を高める方策とは」
病院人事の立場から見た「働きがいの土台」

採用担当として、定着率が高い職場を見てきた経験から、働きがいが生まれやすい職場には共通した特徴があります。
特徴① 貢献が見える仕組みがある
患者さんからの反応・チームからの承認・振り返りの機会など、「自分の仕事が誰かの役に立っている」と実感できる場面が定期的にある職場は、働きがいが高い傾向にあります。
逆に、業務をこなすだけで成果や貢献が見えにくい職場では、どれだけ頑張っても手応えを感じにくくなります。
特徴② 成長の機会が用意されている
教育研修・資格取得支援・キャリア相談の仕組みなど、「自分が成長できている」という実感を得られる環境があるかどうかも重要です。
専門看護師・認定看護師などの資格取得支援や、定期的なキャリア面談がある職場は、自己効力感が育ちやすくなります。
特徴③ 心理的安全性が確保されている
意見が言いやすい・失敗しても責められない・相談できる環境があるかどうかは、看護師が主体的に仕事に取り組めるかどうかに直結します。
「怒られるかもしれない」という緊張感の中では、自分の判断や行動に自信が持てず、働きがいも感じにくくなります。
働きがいを取り戻すための3つの視点

今の職場で働きがいが感じられない場合、次の順番で考えることをお勧めします。
視点① 「処遇条件」の問題か「働く意味・貢献感」の問題かを分ける
- 給与・休日・人間関係などの条件面の不満なのか
- 「何のために働いているのかわからない」というそもそもの働く意味の問題なのか
まず、この2つを分けて整理してみましょう。
1は職場環境の問題、2はキャリアの方向性の問題です。
これらを混同したまま動いてしまうと、解決策がズレやすくなります。
視点② 今の職場でできることを試し切る
- キャリアプランを言語化してみる
- 専門領域や興味のある分野を絞ってみる
- 院内外の研修や勉強会に参加してみる
- 信頼できる先輩や上司にキャリアの相談をしてみる
「今の職場では何もできない」と判断する前に、試し切れていないことがないかを確認してみましょう。
なお、外部の専門家に相談したい場合は、ナースセンターの就業相談や国家資格キャリアコンサルタントによる無料相談も活用できます。
参考:
視点③ それでも変わらないなら、環境を変えることも選択肢
視点①②を試したうえで、職場の構造的な問題(評価制度・マネジメント・組織文化)が働きがいを妨げていると判断できるなら、環境を変えることを検討する価値はあるでしょう。
ただしその場合も、
「今の職場が嫌だから」ではなく、「次にどんな働きがいを求めるか」
を言語化してから動くことが重要です。
よくある質問(FAQ)

「働きやすさ」と「働きがい」どちらを優先すべきですか?
どちらかを犠牲にする必要はありません。
ただし優先順位は、自分のライフステージや状況によって変わります。育児や体力的な問題を抱えている時期は「働きやすさ」の土台が先に必要になるでしょう。
その土台が整ったうえで「働きがい」を追求していく順番が、長期的なキャリア形成を考えるうえで重要です。
働きがいが感じられないのは、職場のせいですか?
職場の環境が影響していることはあります。
ただし、同じ職場でも働きがいを感じている人と感じていない人がいるのも現実としてあります。
「職場の問題」と「自分のキャリアの問題」を分けて整理することが大切です。どちらか一方だけに原因を求めると、解決策が偏りやすくなります。
転職すれば、働きがいは取り戻せますか?
環境が変わることで働きがいが回復するケースはあります。
ただし「今の職場に働きがいがない」という理由だけで動くと、転職先でも同じ疑問にぶつかりやすくなります。
「次の職場でどんな働きがいを求めるか」を言語化してから転職を検討することが重要です。
まとめ

「働きがい」は職場から与えられるものではなく、自分が仕事に価値や喜びを感じている状態のことです。
- 「働きやすさ」と「働きがい」は別物
- 働きがいの土台は「貢献が見える・成長できる・安心して働ける」環境
- まず今の職場でできることを試し切ることが先決
「どんな職場が自分に合っているか」を知ることも、働きがいを考えるうえで重要な視点になります。
こちらの記事は、看護師にとっての「働きやすい職場」とは何か、元病院人事の視点で整理しています。

一方こちらは、看護師がやめた方がいい職場の特徴を解説しています。併せてお読みください。

そもそも看護師を辞めたいと感じている方には、整理すべき視点を解説したこちらの記事から読んでいただくのがわかりやすいです。

