Q. 「働きやすい職場」に転職したいのですが、何を基準に選べばいいのでしょうか?
「働きやすい職場」という言葉は、人によってイメージがまったく違います。
夜勤がない職場を求める人もいれば、人間関係の良さを最優先にする人もいます。
給与水準を重視する人もいれば、スキルアップの機会を重視する人もいます。
だから「何を基準に選べばいいか」という問いに対して、一つの正解を出すことはできません。
ただ、元病院人事として多くの看護師の採用・定着に関わってきた立場からお伝えできることがあります。
それは、「働きやすい職場を探す」前に、
まずは「今の職場の何が自分に合っていないか」を整理することが大事
ということです。
この記事は、「働きやすさ」の基準を自分で整理するためのページです。
結論:

「働きやすさ」の基準は人によって違います。まず「自分が何に困っているか」を整理することが先です。
転職先を探す前に、今の職場の何が問題なのかを言語化できていないと、転職しても同じ問題にぶつかりやすくなります。
「働きにくさの正体」を整理することが、「働きやすい職場」を見つける最初の一歩です。
看護師が「働きにくい」と感じる理由を整理する

株式会社viexが現役看護師1,070人を対象に行った調査(期間:2024年10月24日~11月1日、対象:現役看護師1,070人、調査方法:インターネット)によると、
看護師を辞めたいと「少し思う」「かなり思う」と回答した人は合わせて68.5%いることがわかりました。
つまり、約7割の看護師が辞めたいと感じているということになります。
以下の資料は、看護師を「辞めたい理由」と、「それでも辞めていない理由」を聞いた回答結果です。
- 1位「仕事内容と給与が見合っていないから」 35.8%
- 2位「仕事内容が精神的につらいから」 32.8%
- 3位「仕事内容が肉体的につらいから」 30.2%
- 4位「仕事が忙しいから、休暇が取れないから」 25.2%
- 5位「職場の人間関係が良くないから」 15.0%
- 1位「金銭面で不安があるから」 43.5%
- 2位「辞めたい気持ちより転職が面倒だという気持ちが強いから」 24.7%
- 3位「退職や転職といった行動を起こす余裕がないから」 20.1%
- 4位「看護師を辞めることに漠然とした不安があるから」 19.2%
- 5位「職場や同僚に迷惑がかかるから」 11.1%
このデータから見えてくるのは、
「働きにくさ」の原因は給与・業務量・人間関係の複合的な問題であり、
「辞めない理由」は経済的不安と行動する余裕のなさ、だということです。
つまり多くの看護師は、問題を感じながらも整理する余裕がないまま働き続けている状態にあることがわかります。
病院人事の立場から見た「定着率が高い職場」の共通点

視点① 給与・労働条件が適切に整っている
給与水準は「高ければいい」ではなく、「業務の負荷と見合っているか」が重要です。
人事の視点から言うと、給与条件だけで採用した人材は定着しにくく、条件と業務内容が見合っている職場は、離職率が低い傾向にあります。
- 夜勤回数
- 残業の実態
- 有給取得率
なども、求人票だけでなく見学時に確認すべき項目です。
参考までに、日本看護協会がまとめた「2024年 病院看護実態調査」から、看護師の平均給与を共有します。
| 平均基本給与額 | 平均税込給与総額 | |
| 新卒初任給(高卒+3年課程卒) | 209,697円 | 276,127円 |
| 新卒初任給(大卒) | 215,614円 | 284,063円 |
| 勤続 10年(31~32歳・非管理職) | 250,380円 | 334,325円 |
出典:日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」
※「税込給与額」には、通勤手当、住宅手当、家族手当、夜勤手当、当直手当、看護職員処遇改善に係
る手当等を含む(時間外勤務の手当は除く)。但し新卒者については、家族手当は含まず、単身・民間アパート居住とする。
※夜勤をした場合には、当該の月に三交代で夜勤8回(二交代で夜勤4回)をしたものとする。
引用:公益社団法人日本看護協会
2024年病院看護実態調査報告書
視点② ワークライフバランスが保ちやすい
女性の場合は、自身のライフイベントで一度就業を離れたり、短時間で勤務することも想定して職場を選ぶことが大事です。
- シフトの安定性
- 休暇の取りやすさ
- 育児との両立支援
こうしたプライベートとの調整がしやすい職場は、定着率が高い傾向にあります。
採用担当として気を付けていたのは、「制度があるかないか」だけでなく「実際に使えているかどうか」です。
育児短時間勤務の制度があっても、使っている人がいない職場は要注意です。
視点③ 福利厚生が実態として機能している
入職時に給料やその他の労働条件と併せて総務部門から説明されているはずです。
ただ、その後は忙しくてチェックしていない人も多いのではないでしょうか。
- 育児・介護休暇制度
- 院内保育所・託児所
- 職員寮・住宅手当
など、福利厚生の充実度は長期就業の意欲に影響します。
しかし、制度として存在するだけで実態が伴っていないケースもしばしばあります。
見学や面接の場で、実際の活用状況を確認することが大切です。
視点④ 職場の人間関係・雰囲気が健全
看護師は、医療現場における人間関係(患者・家族・医師・その他医療スタッフ)の中心になります。
そのため、職場の人間関係に悩む看護師はとても多いのが現実です。
人間関係は働きやすさに直結しますが、求人票や面接だけでは見えにくい部分でもあります。
人事として職場を見るときに確認していたのは以下の点です。
- スタッフ間で自然な会話があるか
- 上長が現場の意見を聞く姿勢があるか
- 新人が萎縮せずに質問できる雰囲気があるか
- パワハラ・いじめへの対応方針が明確か
なお、男性看護師が一定数いる職場は、人間関係が比較的穏やかになる傾向があります。
病棟は女性中心になりやすいため、多様な視点が入ることで職場の空気が和らぐことがあります。
視点⑤ 教育研修体制が整っている
前掲したアンケートの「辞めたい理由」2位は、「仕事内容が精神的につらいから」でした。
これは、人の命を預かる責任の重さからくる感情とも受け取れます。
スキルアップの機会が整っている職場は、業務に対する自信を深め、精神的負担の軽減につながります。
確認すべきポイントは以下のとおりです。
- チーム全体で新人を支援する体制があるか(プリセプター個人への依存が強い職場は人間関係リスクが高い)
- e-ラーニングなど自分のペースで学べる環境があるか
- 専門看護師・認定看護師の資格取得支援があるか
- 個別のキャリアプランを相談できる仕組みがあるか
転職を考える前に、今の職場を評価してみる

【今の職場を評価する3つの問い】
- ① 働きにくさの原因は「職場」か「自分の状況」か
-
- 業務量・人間関係・給与など職場の構造的な問題なのか
- 一時的な疲弊や環境の変化によるものなのか
上の2つを分けて考えてみてください。
- ② 今の職場で改善できる余地はあるか
-
- 配置換え
- 業務調整
- 相談できる上司の存在
など、転職以外で解決できる可能性はないかを確認してみてください。
- ③ 「今すぐ」と「いずれ」を分けて考えられているか
-
- 心身が限界に近い状態
- キャリアの方向性として転職を考えている状態
上の2つでは判断のプロセスが変わります。焦って動く必要はありません。
よくある質問(FAQ)

職場見学で何を見ればいいですか?
求人票ではわからない「実態」を確認する機会として活用してください。
スタッフの表情・会話の様子・職場の清潔感・動線のスムーズさなどの雰囲気は現場でしか確認できません。
可能であれば、実際に働いている看護師に話を聞く機会を求めることも有効です。
求人票でわかること・わからないことは何ですか?
求人票でわかるのは給与・勤務形態・福利厚生の制度面です。
一方でわからないのは、人間関係・実際の残業時間・有給の取得のしやすさ・教育体制の実態などです。
「制度がある」と「実際に使える」は別物だと理解したうえで、見学や面接で実態を確認する姿勢が重要です。
今の職場の人間関係が問題です。転職すれば解決しますか?
人間関係の問題は、転職すれば必ず解決するとは限りません。
「今の人間関係の何が問題か」を整理せずに転職すると、似たような状況に直面するケースも少なくありません。
まずは問題の原因を言語化することが先決です。
まとめ

「働きやすい職場」に絶対的な正解はありません。
大切なのは「自分が何に困っているか」を整理することです。
- 働きにくさの原因は給与・業務量・人間関係の複合的な問題が多い
- 定着率が高い職場には、条件・雰囲気・教育体制の実態が伴っている
- 転職の前に、今の職場を評価する視点を持つことが重要
「やめた方がいい職場とはどんな職場か」を知ることも、自分にとっての「働きやすさ」を整理する助けになります。こちらの記事で解説しています。

以下の記事では、看護師にとっての「働きやすい」職場と「働きがい」のある職場の違いにも触れています。

転職すべきか迷っている看護師に向けて、3つの視点を解説した記事がこちらです。

