「今の職場はちょっとしんどい…」
このような悩みを抱えながら働いている看護師さんはとても多いと思います。
仕事を辞めたい…と考えているあなたは、まさにキャリアの分岐点を迎えていると言ってもいいかも知れません。
実はこの悩みを抱えているのはあなただけではなく、周りの同期や多くの先輩たちも抱えている悩みなのです。
この先の長い人生を考えると、今しっかりと自身のキャリアを見極めることが何より大事です。なぜなら、職場環境が与える影響は、看護師としてキャリアを積み上げていくうえで、スキルや経験だけではなくあなた自身の健康面にも大きく左右することだからです。
筆者は元病院人事として、悩みを抱えながらも現場で働き続ける看護師さんや、反対に転職活動に踏み切った方の中途採用にも多く関わってきました。
本記事では、現状の職場に悩みを抱える看護師さんが考えるべきポイントや看護師資格活用の選択肢について解説します。
この記事を読んで、今後のキャリアプランや転職活動の参考にしていただけるとうれしいです。
ポイント1:まずは職場内での異動の可能性を考える

今の職場で解決できる悩みかどうかを考える
「看護師を続けるべきか、辞めるべきか…」
このような悩みを抱えながら日々の業務に励んでいる看護師さんはたくさんいるでしょう。特に、看護師経験が浅めの方や自身のライフステージに変化が生じる方などに多く見られる悩みだと思います。
その一方で、
「看護師は続けたい。だけど、今の職場はちょっとしんどい…」
と考えている人も少なくないのではないでしょうか。
そういう悩みを抱えている人は、まずは今抱えている不安や不満が今の職場で解決できることなのか、そうではないのか、について考えてみることをお勧めします。
それは、つまり、内部異動の可能性を探るための事前準備と言えます。
ここでは、看護師さんが抱えやすい不安や不満の例を2点挙げて、その解決可能性について考えてみたいと思います。
悩み①:「今の部署が自分に合わない」場合の異動の可能性は?
「希望した部署で働いているけれど、自分の目指した看護が実現できそうにない…」
「そもそも希望していた部署に配属されなかった…」
このように、今いる部署であなたの目指した看護が提供できないことに不満を感じたり、自分が経験を積みたい部署が別にあるという人も多いと思います。
そうした場合、どのようにしたらいいのでしょうか。
素直に希望部署の意思表示を
そうしたモヤモヤした気持ちを抱えている場合は、希望の部署へ異動がかなうか上司と相談してみることをお勧めします。
医療機関によっては年度の前期と後期など、定期的に上司との面談を行っているところもあると思います。
全て希望どおりにいくとも限りませんが、何も表現せずにモヤモヤした状態で働き続けることは、自分にとっても周りにとっても幸せなこととは言えません。
誰にでも仕事の適正はあると考える
仕事の適性が合う、合わないというのは誰にでもあることです。
特に外科系病棟は、ベッドの回転が速く緊急入院の対応も多くなるため、常にキビキビ動ける人でないと日々の業務についていくことが難しくなります。患者との関りも希薄になりがちのため、看護師としてのやりがいを模索している人も少なくないでしょう。
もしそのように「環境を変えたい…」、と考えている場合は、比較的ゆったりとした病棟への異動を打診してみて、もしそれで異動がかなえば、同じ職場で自分の経歴が途切れることなく新たな看護師経験を蓄積することができます。
悩み②:「夜勤がきつくて仕事が辛い」場合の異動の可能性は?
「最近、夜勤が多くて体調がすぐれない…」
「夜勤の疲れがたまって、仕事にも支障が出始めている…」
このように体調面やそれに伴う看護提供面で悩む看護師さんも少なくないと思います。このような場合には、どうすればいいでしょうか。
速やかに夜勤負担軽減の意思表示を
まずやるべきことは、上司にしっかり理由を打ち明けたうえで夜勤回数を減らしてもらうことができるか相談することです。
自身の急な体調不良から他のスタッフに勤務の影響が及ぶ可能性がありますし、シフト作成の手続きの関係もあるため、なるべく早い時期に相談することをお勧めします。
夜勤負担の少ない部署への異動を打診
部署内での夜勤負担の軽減を相談したものの、それが難しい場合もあるでしょう。自分の負担が軽減されても誰かがその負担を負わなければならないため、その部署に居づらい思いをすることになるかも知れません。
このままさらに夜勤を重ねて、その影響から仕事面に支障をきたし、患者さんのケアにまで影響を及ぼす可能性が高まることも考えられます。
そうならないためにも、夜勤の負担が軽い部署への異動を打診することをお勧めします。
日勤のみの部署は少ない
日勤部署への異動を打診したとしても、全く夜勤がない、という部署はあまり多くないのが現実です。
内視鏡室や手術室は、夜勤の負担が一般的に少ない部署になりますが、その代わりに緊急呼び出しや時間外勤務が発生しやすいので注意が必要です。
人気の高い健診部門では夜勤有りの場合も
夜勤がない部署として人気が高いのは健診センターなどの健診部門です。
健診部門では、健診受診者に対する問診や採血・血圧測定などの現場業務や、健診結果処理などのデスクワークが主な仕事になります。
出張によるバス健診を行っている医療機関もあります。その場合、早朝からの出勤や土日出勤があるなど、勤怠が不規則になる可能性があります。
また、施設によっては救急外来での夜勤に組み込まれる可能性もあるため、事前確認が必要です。
重要なのは「自分のなかでの優先順位付け」
ここまで、現状の職場に悩みを抱えた際に内部異動を検討する場合のポイントについて考えてきました。
前述のように、これまで働いてきた同じ医療機関のなかでも、部署によって条件が様々変わってくることがご理解いただけたかと思います。
いま働いている職場で異動の可能性を考える際には、部署ごとの条件を見極めて、あなた自身のなかでどのような優先順位付けをして折り合いをつけるのかがポイントになるでしょう。
自身で希望部署の意思決定を行い、その旨上司に打診できれば、あとは施設内の人事調整次第になります。
現在、多くの医療機関では、可能な限り適材適所の配置や個人の希望を取り入れることで、スタッフの早期離職防止や長期就業を意識的に進めています。医療機関の人事担当者としては、スタッフが自身の希望や職場の悩みについて何も意思表示せずに職場からいなくなってしまうことは、何とか避けなければいけないことですし、もし離職が現実になれば医療機関として大きな損失につながります。
看護師さん本人にとっては希望や悩みなどの意思表示を発すること、医療機関にとってはスタッフの意思表示をしっかりと汲み上げることが非常に大切なことなのです。
なお、キャリアプランを考える際に必要になる自己分析の方法などについて、以下の記事で詳しく解説していますので是非ご参考ください。

ポイント2:次に他の医療機関への転職の可能性を考える

内部異動が難しければ転職を検討
前項では、いま働いている医療機関で自分の希望や適正に合う部署への異動がかなうのか、その可能性について考えてきました。
その結果、今の職場内であなたが抱える不安や不満を解決することが難しいと判断した場合、次に、他の医療機関への転職を検討することになります。
ここでは、前項の例を参考に、他の医療機関への転職の可能性について考えてみたいと思います。
悩み①:「今の部署が自分に合わない」場合の転職の可能性は?
「日々の業務が忙しすぎて自分の適正に合ってないのでは…」
「希望部署を上司に相談したけれど、あまりいい顔されなかった…」
このように、仕事の適正に悩みを持って職場内での異動を検討して打診した結果、それも難しいという場合も考えられます。
こうした場合、どのようにすればいいでしょうか。
慢性期・地域包括ケアを視野に入れる
こうした状況の場合、特に大学病院や大規模病院(超~急性期)の看護師さんの場合は、慢性期や地域包括ケア病棟などベッドの回転が緩やかな病棟を持つ病院への転職を検討するのもひとつの考え方になります。
病棟経験のある看護師さんについては、急性期病棟に限らず他の機能のベッドを有する多くの病院が募集をかけて、人員の拡充を図っている状況です。
入退院や緊急対応の頻度が比較的少ない病棟であれば、以前より落ち着いた環境で自身の能力が発揮でき、思い描いていた看護を実践できる可能性が高まるかも知れません。
病棟経験が少なくても急性期での経験が必ず活きる
看護師になって年数が浅い人のなかには、「病棟経験が少ないから転職は難しいのでは…」と尻込みする人も多いと思います。
しかし、人手不足を抱える一般病院においては、経験年数浅めの看護師さんでも普通に歓迎される可能性は十分あると思います。
病棟の機能が異なっていても、これまであなたが積み上げてきた急性期病棟での経験がしっかり活かせるからです。
大規模病院へ転職する場合の注意点
中小規模の医療機関で働く看護師さんについては、どのような選択肢があるのでしょうか。
当然、今よりも規模が大きい(超)急性期病院への転職も一つの選択肢です。
しかし一概には言えませんが、急性期病院で規模が大きくなるにつれ患者さんとの距離が遠くなってしまう可能性があります。患者さんとの関わりに看護のやりがいを感じる方にとっては注意が必要です。
また、病院規模が大きくなると今の職場よりも教育制度が充実する可能性があります。教育制度がより充実することは当然素晴らしいことですが、その反面、実際の業務以外の活動が増え自分の時間が取りづらくなる可能性が高まりますので、これにも注意が必要です。
将来を見据えて決心して転職したのに、ワーク・ライフ・バランスが以前の職場より崩れてしまっては、自身の体調面や看護師としてのキャリアの持続性に影響を及ぼしかねません。
なお、看護師としてのキャリアの再評価のポイントについて、以下の記事で詳しく解説していますので是非ご参考ください。

ケアミックス型の医療機関で自分の居場所を見つける
今は一つの施設で様々な機能の病床を有するケアミックス型の医療機関が数多く存在します。
そのような多様な機能を有する医療機関で自身の適正を見定めて、能力を発揮して長く働くという働き方も選択肢の一つだと言えるでしょう。
大規模病院で働く看護師さんにとっても、中小規模の病院や施設で働く看護師さんにとっても、また経験年数が浅めの看護師さんにとっても、今以上に自分の特性を活かせる職場が他に見つかるかも知れません。
逆に、もし経験年数が少なくて転職を尻込みしているような方であっても、それまであなたが積み上げたスキルだったり、あなたが目指す看護観を実際に必要としている他の医療機関が、あなたからの応募を待っているかも知れないのです。
悩み②:「夜勤がきつくて仕事が辛い」場合の転職の可能性は?
「夜勤が重なって、最近体調がすぐれない…」
「上司に相談したけれど、夜勤が常勤職員での雇用の前提と言われた…」
このように、夜勤が常勤雇用の前提とされている職場のルールに悩んでいる看護師さんも多いのではないでしょうか。
いくら体調が悪くても自分だけ夜勤を免除してもらえるとも限りません。それでは、この場合には、どのようにすればいいのでしょうか。
クリニックや透析施設を視野に入れる
夜勤で体調を崩すなどの理由で転職先を探す場合では、地域のクリニックや透析施設、健診専門施設などが転職先の候補になります。
しかし、そもそも夜勤がない職場は転職先として競争率が高いので、勤務地や給与面での条件まで多くを求めすぎるとなかなか採用にまで至らない可能性が高まります。
特に近年、美容系のクリニックが増えており、条件面を厚くして看護師の人員確保を図っているグループもあるようです。
こうした求人広告に目移りして転職の候補先が定まらず、採用までに無駄に時間がかかってしまうリスクも考えられます。
介護施設や訪問看護ステーションを視野に入れる
一方、介護施設や訪問看護ステーションなどの施設についても転職先の候補となります。
このような在宅に近い施設については、今後も看護師の需要が高まっていくことが予想され、各施設の運用元はますます看護師の人員確保に力を入れていくものと思われます。
しかし、訪問看護を職業にする場合に注意しなければならない点として、看護師1人でサービス提供する機会があることが挙げられます。利用者のお宅に看護師1人で訪問して看護サービスを提供する必要があるため、相応のスキルや経験、判断が求められます。
そうしたときに経験年数が浅めの看護師さんにとってはハードルが高いとも言えますが、今のうちに仕事内容や条件面、募集状況をチェックしておくのもいいかも知れません。
重要なのは「効率的な情報収集とはっきりとした取捨選択」
ここまで、内部異動の希望がかなわなかった場合の他医療機関への転職の可能性について考えてきました。
他の医療機関への転職を考える場合、内部異動での自身の身の振り方とはケタ違いに色々な選択肢が出てきます。そして、色々頭に浮かんできた選択肢を実際にリストアップするとともに、効率的に情報収集を行い、転職の志望先を絞っていく作業が必要となります。
さらに、志望先を絞る作業の前提には、あなたが転職先に何を求めるのか、徹底した自己分析が重要になることは言うまでもないでしょう。
働きながら転職先を探すのか、それとも退職してから転職先を探すのか、についても事前に考えておかなければならない重要な問題です。
とにかく考えることや、実際にやらなければならないことが山ほど出てくるのです。そうした時に重要なのは、取捨選択をはっきり行うことになります。
特に今の職場で働きながら転職先を探す場合には、かなり時間が限られた中での転職活動となります。自己分析を十分行い、事前に自分なりの取捨選択の軸をはっきり示したうえで志望先の意思決定を行う。このように転職活動を進めることができれば、本当の自分の居場所を見つけることができるかも知れません。
まとめ
本記事では、現状の職場に悩みを抱える看護師さんが考えるべきポイントや看護師資格活用の選択肢について解説してきました。
「異動か転職か?」
キャリアの分岐点に立った今、最も大事なことは、自分が仕事を進めていくうえで、何に重きを置いて働いていくのかという意思決定になります。
仕事内容や職場の雰囲気、給与面、勤務地など仕事選びには様々な要素がからんできます。いかにそれらを自分の責任で優先順位付けして、自分の職場としての意思決定を行えるか。
この意思決定が、あなたの本当の居場所を見つけるための最重要課題になります。
自分の人生は自分でしか決められません。是非このチャンスを活かして、理想の生き方を実現させてください。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。