看護師の皆さん、県外への転職を考えたことはありませんか?
これまで看護師として地道に歩んできた分、一度地元の外に出て、看護師の仕事のもっと広く、もっと深く知りたい…そんな風に思っている人も少なくないのでは?
これから全く別の地域でキャリア形成を図ろうとしたときに、どんな準備が必要なのか、そもそもうまく転職できるのか、いま適切に見極めることが大事です。
本記事では、看護師さんが県外転職を考える理由やメリット・デメリットを解説し、県外転職するまでの手順や注意点についても紹介しています。
なお、筆者は都市部にある元病院人事担当者として、多くの看護師さんの採用に関わってきました。
この記事を読んで、今後のキャリアプランや転職活動の参考にしていただけるとうれしいです。
看護師が県外への転職を希望する理由
「地元を飛び出して、看護師としてもっとステップアップしたい!」
「一度都会暮らしを経験してみたい!」
地元から都市部の医療機関へ、その反対に都市部から地方へ移って、自分なりの働き方を求めている看護師さんは意外に多いのかも知れません。
看護学生向けに情報発信しているWEBサイト「看たまノート」では、全国の看護学生228人に対して「地元を出るvs地元を出ない」をテーマにアンケート調査を行っています。(2022年10月・SNSにて下記の4択からアンケート実施)
その調査結果は、以下のとおりです。
- 1位「場所にこだわりはない」(91票・39.9%)
- 2位「都会で働きたい」(66票・28.9%)
- 2位「地方で働きたい」(66票・28.9%)
- 4位「へき地・離島で働きたい」(5票・2.19%)
場所にこだわらないという意見が約4割と最も多いですが、「都会で働きたい」という意見も3割近くいることがわかります。看護学生からは、
いろんな症例と最先端の医療を学び、看護師としてスキルアップしたいから。
都市部の方が多様性があり、様々な経験ができると思う。また、同期が多く、教育体制もしっかりしている為。
というように、単なる都市部への憧れというより、自身のキャリアをしっかり見据えた意見を寄せているようです。
出典:「看たまノート」地元を出るor出ない?イマドキ看護学生の病院選びに場所は重要?
それでは改めて、世の看護師さんがどんな理由から県外へ転職したいと考えるのか、想定される理由をいくつか挙げてみたいと思います。
理由①:新しい環境で自己発見したい
慣れ親しんだ地元を離れ、新しい環境で自分の可能性を探りたいという思いがあるのかも知れません。
理由②:都市部の活気ある生活に惹かれている
地元で落ち着いた生活を送っていく良さもあれば、都市部の新しい環境で活気のある生活を送りたいという思いがあるのかも知れません。
理由③:キャリアアップと自己成長の機会を探している
都市部の医療機関では、より多くの症例や高度な医療技術に触れる機会が多いため、専門性を高めたい、技術の優れた医療機関で自分の能力を試し、より大きな挑戦をしたいという思いがあるのかも知れません。
理由④:ライフスタイルの変化への準備をしたい
結婚や子育てなど、将来のライフスタイルの変化を見据えて、今のうちにより多くの経験を積みたいという潜在的な動機があるのかも知れません。
理由⑤:将来的に地元に貢献したい
将来的に地元に戻り、都市部で得た経験やスキルを活かして地域医療に貢献したいという想いが潜在的にあるのかも知れません。
理由⑥:給与の向上を期待している
都市部の医療機関では、物価の関係から、地方と比べて給与が充実している傾向にあります。現状よりも収入を上げたいという想いがあるのかも知れません。
給与の条件を求めていくことは、職業として看護師を長く勤めていくうえで、とても大事なことです。組織に貢献した分それに見合った報酬がないと、心が折れやすく、勤務継続が難しくなるからです。
以下の記事では、看護師さんにとっての働きやすい職場について解説しています。併せてご参考ください。

県外都市部の医療機関に転職する場合のメリットとデメリット
ここでは、都市部の医療機関に転職する場合のメリットとデメリットを考えたいと思います。
都市部への転職を検討する際は、以下のメリットとデメリットを慎重に検討して、あなたの職業観や生活スタイルに合っているかを見極めることがとても重要になります。
県外都市部へ転職する4つのメリット
まず、県外都市部転職のメリットを考えてみます。
メリット①:より多くの症例や看護を経験できる
都市部の医療機関では、様々な疾患を抱えた患者の看護が経験できます。
多様な疾患への看護を経験することで、看護における技術と知識の両面を向上させることができ、さらに新たな分野への興味を発見できるなど看護の視野が広がります。
メリット②:キャリアアップの機会が増える
地方と比べて都市部にはより多くの医療施設や企業があるため、看護師が活躍できるフィールドが広がります。その分、求人数も相対的に多くなります。
働く場所の選択肢が増えるため、自身のキャリアプランに合った職場を見つけやすくなります。
メリット③:専門性を高められる可能性がある
都市部の大規模医療機関では、充実した研修プログラムや継続的な学習機会が得られる環境が整っている傾向にあります。
当然、地方でも自身の心持ち次第で専門性を高めることができますが、都市部に情報が集まっている現状から考えると、より専門性を高めるチャンスが豊富にあると言えるでしょう。
メリット④:都市部の生活を楽しめる
都市部の活気ある生活に触れることで、オンとオフの切り替えができ、仕事にも張りが出ます。
旅行に興味がある方の場合、都市部の方が海外を含め観光地へのアクセスが優れているため、ストレスなくゆっくりと旅行を楽しめるかも知れません。
県外都市部へ転職する4つのデメリット
次に、県外都市部転職のデメリットを考えてみたいと思います。
デメリット①:勤務環境がより厳しくなる可能性がある
都市部の医療機関では、来院する患者の数自体が多く、さらに多様な疾患の患者を受け入れている傾向にあります。
患者数に比例して看護業務が増えるため、あなたがいま働いている環境よりも看護師一人あたりの業務負担が増える場合があります。
看護師不足に陥っている都市部の病院は少なくありません。過重労働が続くことで、心身に不調をきたすリスクがあることも念頭に置いておく必要があります。
以下の記事では、看護師さんが絶対に避けるべき職場の特徴を解説しています。是非ご参考ください。

デメリット②:業務の高度化により、ストレスが増える可能性がある
都市部の医療機関では、症例数の多さや症例の多様化が進むことで、看護業務が複雑になる傾向にあります。
業務の複雑化により、自身が仕事を進めていくうえでプレッシャーやストレスが増加する可能性があります。
以下の記事では、看護師の適正に自信を失いかけたときの対処法について解説しています。是非ご参考ください。

デメリット③:地方と比べて人間関係が希薄になる可能性がある
地縁を伴う地方の強めの人間関係に比べて、都市部のは多様な人たちが集まる、良くも悪くも希薄な人間関係が特徴になります。
新たな職場環境で、新たな人間関係を構築するにあたり、都市部特有のドライな人間関係に余計なストレスを抱える場合もあるかも知れません。
反対に、地方での強めの人間関係にストレスを感じている人にとっては、都市部のドライな人間関係の方が働きやすく、精神的に楽になるのかも知れませんね。
デメリット④:生活費や住居費が高くなる可能性がある
都市部は地方に比べて物価が高く、特に住居費が高くなる傾向があります。
給与の手取り額が増えたとしても、住居費や飲食代などの固定費が増えてしまうので、実質的な可処分所得が減少する可能性があります。
県外都市部の転職にふさわしい候補先
看護師さんが都市部の医療機関へ転職する場合、どのような施設が候補としてふさわしいのでしょうか。
特に、比較的まだ経験が浅い看護師さんが、新たなキャリアをスタートさせる職場選びのポイントとして、2つ挙げたいと思います。
- 様々な経験を積むことができる職場であること
- 経験を積みながらも比較的安定した働き方ができる職場であること
この2つをクリアしていれば、キャリアアップのモチベーションを維持しつつ、心身ともに健康な状態で看護師の仕事を継続することができます。
環境が変わっても「続けること」が大事です。
候補①:大規模病院
高度な技術に触れながらキャリアアップを目指したい看護師さんに向いています。
大学病院など都市部の大規模病院では、多様な症例や最新の医療技術に触れる機会に恵まれているため、今よりもさらに専門性を深めることや、新たな分野に興味を広げて自身の得意分野にすることもできます。
一方、大規模病院には超急性期病院が多いため、入退院の頻度が増え、患者さんの急変にも常に気を配っておく必要があります。患者さんと関わる時間も少なくなり、看護師としての体力・精神力・モチベーションの維持が課題となります。
候補②:ケアミックス型中規模病院
幅広く看護を習得しながらキャリアアップを目指したい看護師さんに向いています。
ケアミックス型の病院では、幅広い診療科や様々な特徴を持つ病床での看護を経験できる機会に恵まれていると言えます。
また、医療機関の方針によりますが、中規模病院は大規模病院よりも比較的ベッドの回転が緩やかな病床を有する傾向があるため、相対的に業務負担が軽くなる場合もあります。
候補③:専門診療科・美容クリニック
専門診療科や美容など、特定の分野に特化したクリニックで安定的に働きたい看護師さんに向いています。
それぞれ候補となる理由をまとめておきます。
- 1.専門診療科クリニック
-
- 病院と比べて重篤患者への看護処置が少ないため、精神的負担が比較的軽減されます。
- 外来診療が中心のため、業務内容が比較的安定しています。
- 夜勤がない場合が多く、規則正しい勤務体制が期待できます。
- 2.美容クリニック
-
- 都市部に多く存在しているため、看護師としての需要が高くなる傾向にあります。
- 美容分野に関する専門的なスキルを習得する機会に恵まれています。
- 夜勤がない場合が多く、規則正しい勤務体制が期待できます。
候補④:リハビリテーション病院
患者さんとじっくり関わりたい看護師さんに向いています。
リハビリテーション病院では、一人ひとりの患者さんと長期的に関わることができ、回復過程を見守ることができます。
また、医師や理学療法士、介護福祉士など多職種と協働する機会が多いため、チーム医療のスキル向上にもつながりますし、リハビリ分野の専門知識やスキルを習得できます。
さらに、急性期病院に比べると勤務スケジュールが安定している傾向があるため、ワークライフバランスが取りやすいのもポイントになります。
候補⑤:訪問看護ステーション
地域医療への貢献を重視したい看護師さんに向いています。
都市部でも高齢化は進んでおり、訪問看護のニーズが高まっています。地域密着の看護師として、サービスを必要とする住民一人一人としっかり関わりを持って、地域医療に貢献できるやりがいのある仕事です。
また、病院勤務と比較すると、プライベートとの両立もしやすい仕事と言えます。
候補⑥:産業看護師
ワークライフバランスを重視したい看護師さんに向いています。
都市部には多くの企業が集中しているため、従業員の健康管理を行う保健師や看護師の需要があります。
産業保健スタッフは少人数制の職場が多いため、一人の看護師に対する責任は比較的高くなりますが、安定した勤務体制が期待できます。
医療機関とは異なる環境で、これまで培ってきた看護スキルを活かせる職場と言えるでしょう。
候補⑦:健診センター
ワークライフバランスを重視しつつ新たなスキルを習得したい看護師さんに向いています。
健康な人を対象とするため、急変対応や重症患者のケアに対するストレスがなくなります。
また、夜勤がない施設が多いため、ワークライフバランスも取りやすいです。
そのうえ、地域の住民や働く人たちの病気の早期発見や健康増進に携わることができるため、やりがいがある仕事とも言えます。
看護師としての基本的なスキルを活かしながら、予防医学に関する新たなスキルを習得できるというのもポイントになります。
都市部の医療機関への転職を成功させるための6ステップ

それでは実際、都市部の医療機関への転職を成功させるためには、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。
6つのステップに分けて説明したいと思います。
STEP①:自己分析を徹底して行う
始めに、充分時間をかけて自己分析を行いましょう。あなたの特性や強み、働くうえで譲れない価値観などを分析します。
あなた自身の内面が深堀りできたら、あなたが本当に希望する業務内容、勤務条件を明確にし、転職の目的を再確認します。そうすることで最適な求人が見つけやすくなります。
ここで大事なのは、県外都市部を選んだ理由を明確にしておくこと。そして、その理由は必ず言語化しておきましょう。
後に訪れる面接の機会で担当者が納得できるほどの転職理由を、この段階で固めておくことが重要です。
転職の際の具体的な自己分析の方法について、以下の記事で解説しています。併せてご参考ください。

STEP②:幅広く情報収集する
次に、都市部の医療機関の運営状況や求人情報を幅広く収集します。
看護師専門の転職サイトや転職エージェントを活用し、あなたの希望に合う求人を探します。転職候補先の地理や運営状況に詳しくない場合が多いと思いますので、始めから転職支援を積極的に活用し、効率的に情報収集することをお勧めします。
転職エージェントは履歴書作成や面接対策などの支援も行ってくれるので、上手に活用しましょう。
以下の記事で、看護師転職サイトのメリットとデメリットについて解説していますので、併せてご参考ください。

STEP③:可能な限り施設見学しておく
次に、できる限り応募する前に施設見学をしておきます。
遠方への転職では時間の制約上、難しいかも知れませんが、ホームページやパンフレットからでは伝わらない、施設のリアルな雰囲気を見学で感じ取ることができます。
見学の最中、すれ違った看護師や他の職員から何気なくあいさつされることがあります。また、逆にすれ違う見学者に無関心な施設もありますので、人間関係や職場風土を重視する人は、時間の許す限り見学しておくことをお勧めします。
STEP④:応募書類を準備する
候補先が絞れたら、転職エージェントを活用しながら履歴書や職務経歴書を作成します。
自己分析で整理したとおり、これまであなたが培った看護技術や知識、実績を具体的に記載し、自己PR文をまとめます。
ここで大事なのは、転職先の業種・職種に合わせて自己PR文をアレンジして作成することです。もちろん県外から都市部への転職を選んだ理由を明確に盛り込むことができれば、採用担当者の理解が得られ、有利に転職活動を進めることができます。
STEP⑤:面接対策を行う
応募書類を準備しつつ、志望する候補先に合わせて、面接で想定される質問の回答を準備しておきます。
転職エージェントを活用し、これまでの職務経歴、志望動機、自己PRを明確に伝えられるよう練習しておくと安心です。
都市部の医療事情についても事前に学んでおいて、都市部への転職を選んだ理由も面接の回答に盛り込むことができれば、より説得力が増すと思います。
勤務条件については、あなたの希望を明確に伝えつつ柔軟に対応することをお勧めします。夜勤の有無や休みの取り方は、新たな生活に直接影響するところなので、確認するようにしましょう。
面接の最後に「逆に質問はありますか」、と聞かれることが多いです。せっかくなので、キャリアアップの機会を聞くなど積極的な印象を与える質問をして、面接を終えられるようにしましょう。
STEP⑥:退職の申し出をする
転職候補先が現実的に決まったら、師長などの人事責任者に退職の申し出をします。
退職の申し出の期限は各職場でルールが決められているはずなので、転職を意識し出した時点で就業規則等を確認しておくことをお勧めします。
遠方への転職をする場合、転居の手続等があるため、より余裕を持った退職日の設定が必要です。急な退職日の設定は、欠員補充のための中途採用や内部異動の人事手続に時間を要するため、避けるようにしましょう。
現在の職場に迷惑がかからないよう、良好な関係を維持しながら職場を後にする意識がとても重要です。
県外都市部の医療機関へ転職を成功させるために気を付けたい5つの注意点
最後に、都市部の医療機関への転職を成功させるために気を付けるべき5つの注意点を説明したいと思います。
注意点①:キャリアプランを明確化させる
都市部への転職は、単なる環境の変化だけでなく、明確かつ長期的なキャリアプランを考えて候補先を選択することが大事です。
そのためには、自己分析を時間をかけて行い、あなたが本当に求める人生観や職業観を深く認識する必要があります。
看護師さんのキャリアプランの考え方については、以下の記事で解説しています。併せてご参考ください。

注意点②:正確に勤務条件の確認を行う
夜勤や残業の頻度、休暇取得の実態など、実際の勤務条件を詳細に確認することが大事です。
都市部では患者層が幅広く、看護業務の難度が上がり、勤務がハードになる可能性があります。事前に正確な勤務条件を把握し、ワークライフバランスを意識した職場選びをすることが非常に重要です。
注意点③:生活コストを計算しておく
地方と比べて都市部は生活費が高くなる傾向があります。そのため、都市部での収入と支出のバランスを事前に計算し、長期的な生活設計を立てておくことが大事になります。
そのためには、転職候補先の給与条件を正しく理解して、手取り額が毎月いくら入ってくるのか把握しておくことが最低限求められます。
また、転職候補先に看護師寮があれば積極的に入居の検討を行いましょう。都市部のマンションの家賃は地方と比較にならないほど高いです。看護師寮に入居できれば毎月の住居費を抑えることができるうえに、通勤も比較的楽にでき、慣れない環境での業務に集中することもできます。新しい仕事や生活に慣れて、土地勘も掴めた時期に、自分の住みたい場所に転居するということでもいいと思います。
注意点④:職場の雰囲気を確認しておく
前述したとおり、可能であれば職場見学を行い、実際の職場の雰囲気や人間関係を確認しておくことが大事です。
地方の人間関係は強めですが、都市部ではドライな関係を保つ傾向にあります。地域によって職場風土に違いが見られる場合があるため、あなたの性格上、都市部の職場風土に適応できるか事前に考慮しておくことも大事になります。
注意点⑤:スキルアップの機会を確認する
都市部の医療機関では、看護における業務量と難度が上がる可能性があります。そのため、どのようなスキルアップの機会があるのか、転職候補となる職場に事前に確認しておくことが大事です。
また、もしあなたが目指しているスキルアップの機会が、現状では得られず、都市部への転職でこそ得られるのであれば、是非、看護師としての自己実現の機会を重視して、都市部での職場選びも検討してみましょう。
まとめ
本記事では、看護師さんが県外転職を考える理由やメリット・デメリット、県外転職までの手順や注意点について解説してきました。
看護師さんが都市部への転職を成功させるための注意点として、
- キャリアプランを明確化させる
- 正確に勤務条件の確認を行う
- 生活コストを計算しておく
- 職場の雰囲気を確認しておく
- スキルアップの機会を確認する
の5項目を挙げました。
この記事を参考に、看護師さんが県外の都市部に転職し、キャリアアップを図るうえでの準備に役立てていただけると幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。